パフォーマンス オブ ネイチャー

知識と科学

200年ものあいだ、オランダは日本にとって唯一の貿易相手国であり、西洋文化と科学の窓口でした。18世紀後半、日本ではそれまでの大陸的な世界観に背を向け、蘭学が花開きます。一方、オランダはヨーロッパ中で爆発的な人気を博していた日本美術と科学の素晴らしさと重要性を広めるユニークな立場にありました。

谷崎潤一郎(1886 – 1965)は陰影礼賛 (1933) の中で次のような興味深い指摘をしている。「もし東洋に西洋とは全然別箇の、独自の科学文明が発達していたならば、どんなにわれわれの社会の有様が今日とは違ったものになっていたであろうか、(中略)もっとわれわれの国民性に合致するような物が生れてはいなかったであろうか。いや、恐らくは、物理学そのもの、化学そのものの原理さえも、西洋人の見方とは違った見方をし、光線とか、電気とか、原子とかの本質や性能についても、今われわれが教えられているようなものとは、異った姿を露呈していたかも知れないと思われる。」

パフォーマンス オブ ネイチャー

私たちはこの谷崎の考え方を基にさまざまな角度から素粒子物理学、とりわけニュートリノのリサーチをします。ニュートリノはこの宇宙で最も謎に満ちたミステリアスな粒子のひとつです。「幽霊粒子」とも呼ばれるニュートリノは、まるで霧の中を弾丸が飛ぶように、通常の物質を通り抜けます。私たちの体は気がつかないうちに、毎秒50兆個ものニュートリノが突き抜けているのです。その特色ゆえにニュートリノを見つけるのは非常に困難です。そういう訳でニュートリノ観測装置はとても特別な機器に囲まれているのです。

スーパーカミオカンデは岐阜県にある、世界で最もエレガントで、最も成果を上げている世界最大のニュートリノ観測装置です。この観測所から2002年と2015年に2人のノーベル物理学賞が生まれています。

スーパーカミオカンデについて

トリニティー (三位一体) 自然のふるまいについてのエッセイ的なドキュメンタリー

岐阜県にある池ノ山。そこには自然、科学機器、人々が絡み合う3つの世界があります。それらは相容れないけれど、切り離すことも出来ない関係でつながっています。その3つの観察と視点から「自然は原子でできているのか、はたまた物語によって作られているのか」を追求します。

映像作品・トリニティーは、見えるものと見えないものが互いに何をすべきなのかを問いかけます。1)素粒子 2)スーパーカミオカンデのニュートリノ検出器 3)池ノ山の周りに暮らす人々 この3つの視点はお互いを鏡のように写し出し、互いの存在を通して意味を持ち、それが物語となるのです。

  • Photo courtesy of the ICRR (Institute of Cosmic Ray Research), The University of Tokyo.

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